「それは日中の出来事でした。私は透明人間に出会ったのです」
そう語ったのは、つい先日透明人間に出会ったという
Jェイムズ氏(仮名)。
氏は先に行われた、皇帝陛下によるカンバーランドへの遠征に同行し、そこで透明人間に出会ったのだという。
以下は本紙の記者がJェイムズ氏に取材を行った時の会話の内容である。
記者「それでは、あなたが透明人間に出会った時のことを、さらに詳しく話してください」
J氏「はい。
あの日は確かハロルド王がお亡くなりになられた日でした。
そして、我々は行方不明となったトーマ王子を探していたのです。
ダグラスの宮殿の中や街の中をいくら探しても見つからなかったので、
我々はネラック城に住むゲオルグ氏を訪問してみました。
ところが…
ゲオルグ氏は『トーマが勝手に王を名乗っている』とおっしゃるのです。
我々は慌ててダグラスに戻ってみましたが、トーマ王子は依然行方不明のままでした。
…と、ここで我々の仲間の一人でいつも先頭を歩いているBア(仮名)が、
街外れの森の中に人がやっと一人通れる位の道を見つけたのです。
そして、その道を抜けた先に…」
記者「透明人間がいたんですね!?」
J氏「…いえ、まだです」
記者「…済みません。ちょっと興奮してしまって…
どうぞ続きをお話しください」
J氏「…で、その先に居たのはトーマ王子でした。
我々が、悲しんでいるトーマ王子を説得して宮殿へ連れ帰ろうとしたその時です!
…突然『何も無い空間』から男の声がしたんです」
記者「なるほど。
その透明人間は男だったんですね?」
J氏「恐らくそうだと思います。
しかし、我々が驚いたのは透明人間が現れた事ではありません」
記者「えっ!?透明人間よりも凄い物が出てきたんですか!?」
J氏「いえ、そうでは無いのですが…
ここからは、あまり大きな声では言えないのですが、
その透明人間が現れた時のトーマ王子と陛下の言動なんですが…」
記者「どうしたんです?焦らさないで早く続きを聞かせてください」
J氏「…二人とも何事も無かったかのようにその声に反応していたんです。
しかも、『何も無い空間』を見つめながら…」
記者「そ、そんな馬鹿な…」
J氏「信じられないかもしれませんが、事実なんです。
その後、サイフリートを倒した我々はパーティーを解散しました。
…表向きは陛下が内政に専念する為ということでしたが、実際は違います。
あの時の一件で我々が陛下に付いていけなくなったからだったのです!!」
記者「あ、あの…」
J氏「何故かそれ以降、私は何者かに後をつけられる様になりました」
記者「それでは私はこの辺で…」
J氏「あ、まだ話していないことが!」
記者「ありがとうございました〜」
以上がJェイムズ氏の告白である。
その後、我々はこの件に関して「アバロン警備隊」に問い合わせてみた。
しかし、警備隊の回答は次のような物であった。
我々の元には透明人間が現れたという報告は一切入っていない。
また、Jェイムズ及びBアという名前の者が皇帝陛下と行動を共にしていたと言う事実も無い。
しかし、本紙ではJェイムズ氏の言葉に嘘は無かったと信じている。
氏を取材した記者も、「彼の話は細部にわたって明瞭で、話におかしい点は無かった」と話していた。
後日入った情報によると、
「透明人間が現れる前に皇帝一行が会ったのは、ゲオルグでは無くソフィアであった」
との事である。
しかし、そんな事はどちらでも構わないと我々は考えている。
なお、Jェイムズ氏に取材を行った記者は、2日前から行方が分からなくなっている。
<アバスポ編集部>